雨上がり月冴え胸に染むるらん 手を合わせては君をや思う
滴塵017
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雨上がり月冴え胸に染むるらん 手を合わせては君をや思う 形式
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現代語訳
雨が上がって月が澄んで輝き、その光が胸に染み入る。その月に手を合わせながら、あなたのことを思っている。 注釈
手を合わせて:祈る仕草。相手への無事や再会を願う心情を示す。敬虔な気持ちや切実な願い。 胸に染むるらん:感情が身体に深く浸透するさまを表現。その光景や感情が心深くに沁みわたるのだろう。 解説
この短歌は、自然現象(雨上がりの月)と人間の感情(恋しい人を想う祈り)が重ねられている点に特徴がある。日本の伝統的な詩歌において「月」はしばしば恋心や祈りの象徴として登場する。本歌もその文脈にありつつ、西行や式子内親王などの「月と恋慕」を詠んだ和歌の系譜に連なる。雨上がりの清澄な月光は、浄化を象徴し、祈りの心情をより深めている。 深掘り_嵯峨
「手を合わせては君をや思う」という表現が秀逸です。愛する人への思いが、単なる恋情ではなく、仏を拝むような、あるいは祈りの対象としての敬虔な感情へと高められています。俗世的な愛の感情が、宗教的な崇敬の念に限りなく近づいた、精神的な愛の歌です。